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さて次は「すごろく図」の⑧から⑫にかけての段階である。
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先にも書いた通りうつに関しては様々な治療法が提唱されている。投薬療法、認知行動療法、はたまたその他の治療法など、千差万別である。
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だが既に述べた通り、効果率百パーセントの治療法、つまり誰に対してもどのような病状でも完璧に有効な治療法というものは、未だ確立されていない。決定打がないのだ。
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ところが目下の現状では、これらの治療法の取捨選択は、患者側の自己選択にまかされている。
- 次のイラストに描いたように、患者の症状と病因に応じて一次診断を行う専門医がいて、それぞれの患者ごとに最適な治療法を選択してくれるわけではないのである。
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もちろん中には、そういう対応をなさっている医師もいらっしゃるかもしれない。またもしかしたら一部では、既にそのような取り組みも行われているのかもしれない。
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だが、それらはあくまでもその一部での対応であって、国の医療体制として制度化されているわけではないのである。
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また、これらの治療法のすべてに健康保険が適用されるのならば、患者の負担費用にそれほどの差は生じない。取捨選択の基準は、あくまで治療法の内容と効果だけになる。
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だが実際はそうではない。健康保険が適用されている治療法は、投薬療法などの一部の治療法でしかない。保険診療以外の自由診療となると、費用の全額が自己負担である。従って、それなりの費用負担を覚悟しなければならない。
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つまり費用対効果の判断基準のハードルが、保険診療と自由診療とでは異なってくる。患者にしてみれば、提唱されているすべての治療法の内容と効果を、同一基準では比較検討できないのである。
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だとすると、ただえさえ患者は治療法の取捨選択に自己判断を迫られるうえ、その比較検討基準も単一ではないことになる。結局、患者は、試行錯誤で取捨選択するしかなくなる。
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このように試行錯誤を強いられる結果、相応の時間と費用と精神的な負担が発生する。だが既に書いた通り、うつとは、そもそも気力を破壊する病気なのだ。
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従って、この治療法選びの取捨選択は、目下治療中の患者に対して二重の負担となる。
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となると、治療法選びの取捨選択に取り組めるようになるのは、すごろく図⑧で書いた「何らかの自律的気力回復」の段階を経過してからになることだろう。
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つまり、抗うつ剤そのほかの投薬の助けを借りながら、一定程度まで気力が回復してからのことになるのではないだろうか。
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なお、すごろく図⑩~⑫の治療法名はあくまで例示であり、全ての網羅ではない。この他にも提唱されている治療法はあるし、一方、ここで分けて書いてある治療法であっても、治療の具体的な内容が重複している場合も有りうる。
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従ってこのすごろく図⑩~⑫は、あくまで上述のような試行錯誤の概念を示すための、あくまでもおおまかな例示であると受け取っていただきたい。
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この四コママンガは、投薬療法開始後八年目での著者の体験である。
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実は投薬開始後六年目で既に一回目の休職をしている。半年間の休職後に復職し、通常勤務を一年半余り継続したのだが、結局再発して二回目の休職に入った。
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右の会話はこの二回目の休職中のことである。
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医師に右の質問をしたのは「このままでは復職と再発を同じことに繰り返すだけだ」と思った為である。
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だが医師の答えは、漫画に描いた通りのものだった。この答えに対しては、当時は「それならそうと最初から言ってくれよ」と思ったものだ。
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まあもっともこの医師としては、他の治療法探しを許可するのに適切なタイミング、つまり相応に気力回復しているのかどうか見計らっていたのかもしれない。今となっては勝手にこう想像することにしているが。
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この問答の後、精神療法とリワークプログラムと、二つの治療法を自力で追加した。いずれも候補を各々三つ選定し、合計六ヶ所の候補を全部訪問して医療相談してから決めた。
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右記の通り、精神療法の追加はパーソナリティ分析を行うためである。だが投薬療法も精神療法も、マンツーマンの診療である。
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従って、グループ療法の利点を考えて、リワークも追加した。
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即ちリワークでは、すごろく図に書いたように他の参加メンバーと共に気づきや相互交流や自信回復を得られ、孤立感や重圧感を脱却して、自分の今後の方向性発見に繋がると考えたためである。
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従って二回目の休職終了と復職までは、投薬療法・精神療法・リワークの三つの治療法を併用していた。
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なおこの内リワークは、二回目の復職により自動的に卒業したが、投薬療法もその後まもなく止めた。結果、その後の治療法は精神療法一つに絞っている。
【この補足の項、終わり】