3)想定している読者層

 本書が読者として想定しているのは、うつ病に関して多少とも何らかの関心のある方々、または何らかのきっかけで関心を持つようになった方々である。
 
なお、著者はサラリーマン生活を通じてうつを体験した。従って下図に示す想定読者層も含めて、本書全体の内容はサラリーマンの視点を前提とした構成になっている。予めご了承願いたい。
もしサラリーマン以外の立場でのうつ病体験に対してご参考になさる場合は、内容を適宜読み替えながらお読みいただきたい。

 さて上図の網掛け部分で示した通り、想定している読者層の中には「①本人」のうちの一部、それから「②家族・親族」と「③職場の関係者」が含まれる。
 
 想定している読者層:

 

① 本人

 ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り) ←「ⅰ健常者(うつ病に対する関心無し)」は除く

ⅲ罹患者

ⅳ体験者

② 家族・親族
③ 職場の関係者

 

以下に各々について述べる。

① 本人

  • 上記「①本人」の中には、「ⅰ健常者(うつ病に対する関心無し)」「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」「ⅲ罹患者」「ⅳ体験者」が含まれる。
  • 前記の通り、このうち上記「①本人」の中で「ⅰ健常者(うつ病に対する関心無し)」は読者としての想定から除いている。それ以外の「①本人」つまり「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」「ⅲ罹患者」「ⅳ体験者」を「①本人」の読者として想定している。
  • イラストは「①本人」のうち「ⅲ罹患者」を示したものである。だが、もちろん上述の通り、それ以外の場合「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」と「ⅳ体験者」も、読者として想定している。
  • このうち「ⅲ罹患者」には、「ⅰ健常者(うつ病に対する関心無し)」であった状況から、発症によっていきなり関心を持たざるを得ない状況に至る場合と、「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」の状況から「ⅲ罹患者」に至る場合との両方が含まれる。
  • いずれにしろ、「ⅲ罹患者」は目下療養中の当事者であるから、当然関心をお持ちのことと思う。少し気分にゆとりが出てきた段階で、本書をお読みいただければと思う。
  • また「ⅳ体験者」は、うつ病に対する関心は再発防止のためにも当然維持されていることと思う。

 

※なお「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」と「ⅲ罹患者」は矢印で繋げてあるが、これは「うつ病に関心を持つようになった健常者は必ず発症する」という意味ではない。後に詳しく述べるが、うつ病になるかならないかの事前予測は不可能である。
従って「ⅱ健常者(うつ病に対する関心有り)」と「ⅲ罹患者」との間の矢印は、破線で示してある。「ⅰ健常者(うつ病に対する関心無し)」と「ⅲ罹患者」を繋いでいる矢印も同様である。

② 家族・親族

  •  この中には、配偶者以外の家族や親族も当然含まれる。配偶者の場合は、男女どちらでも含まれる。イラストは、その中で「本人が男性であり、配偶者が女性」の場合のみ示したものであるが、もちろん上述の通り、それ以外の家族や親族も読者として想定している。
  •  うつ病は、心の中で生じている疾病であるから外見からは分からない。病状の進退に対しても、所謂「客観検査」(物理的化学的数値を測定する検査方法)の方法が無い。
  • 従って、家族・親族などの第三者が病状の良し悪しを察する手がかりが全くない。ただ本人がぐったりと顔色悪く寝込んでいるだけである。
  •  従って、特に「①本人ⅲ罹患者」の家族親族の場合は、心配も看病もしたくても、どうしたらよいのかわからない状況にあることと思う。身近で接しているだけに、その焦りと無力感は大きいものとお察しする。
  • また「①本人ⅲ罹患者」以外の家族親族の場合は、いつ何時そんな状況になったらどうしようかと気が気ではないものだろうと思う。

③ 職場の関係者

  • ここでは、人事部門における労務や厚生業務の担当者、そして現場の管理職の方などを想定している。
  • なぜ社員がうつ病になるのか、なぜ再発するのか、社員は休職中にどのような療養生活はどうなっているのか、業務上一定の知識はお持ちのことと思うが、それでも疑問が募る一方だと思う。
  •  なにしろ回復への展望が見えずに一番苦しんでいるのは本人なのであるから、そんなことは本人には問えない。状況が見えずに一層やきもきする思いのことと思う。
  • 療養中に本人はいったい何をやっているのか、どのような状況にあるのか。本書の内容が、少しでもそれを察するヒントになればと思っている。

このような方々にとって、少しでもヒントになれば幸いである。また、これまでうつ病に関心のなかった方々が、本書をきっかけにうつ病に対して関心を持つようになって下されば、もちろんこれまた幸いである。
 
 なお、既に「おことわり」で述べたように本書は個人の感想をまとめたものである。
 これで十分な内容だとも思っていないし、この内容がすべて正しいとも思っていない。だから読み手の方々には、内容に関して過不足や異論をお感じになることもあろうかと思う。
 その場合は、本書を出発点にそれぞれで補足修正いただき、ご自分が上手に「うつから脱け出せる道」を発見していただければと思う。本書がその一助になれば幸いである。