14)「雇用市場」のメカニズム②:「必要性」と「能力」

「能力」とは「必要性」のこと

  • 「雇用市場」での「価値」とは何か。
    それは「能力」に対して評価された結果だ。もちろんここで言っている「雇用市場」とは、前項で触れた「社内市場」も含めての話しである。
  • ではその「能力」とは何か。
    それは「必要性」である。どういうことか。
  • 「雇用市場」における「能力」とは、個人が実体として有している特性ではないのだ。
    雇用市場にとって「必要とされている特性」のことである。
  • 従って「雇用市場」が必要としている特性を持っている人が「能力がある」と評価される。
    その「能力」として評価されるのは、個人が有している特性のごく一部だけである。次図の【図①】の通りだ。

「ミスマッチ」とは

  • 反対に、あなたが持っている発想、頭脳、技能、知識、経験、感性、人間性などについては、どうか。
    それらは、もしその時点での「雇用市場」にとって必要なければ、価値はない。「能力を持っている」ことにはならないのだ。あなたが他にどんな特性を持っていようが関係ない。
  • 「雇用市場」が必要としている特性をもし持っていなければ、その人は「能力が無い人」なのである。前掲図の【図②】の通りだ。
    それ以外の特性は「あの人は、頭の中に余計なことばかり詰め込んでいる」などと、むしろマイナスの評価を受けかねない。
    これがもし社内の人事異動や組織改編による配置転換で起きたらどうなるのか。社内における所謂「ミスマッチ」となる訳だ。
    では「雇用市場」にとって「必要な」能力とは何か。

 

「能力」とは

  • もちろん様々な場合が考えられるが、極端なことを言えば、こうだ。
    「配置された職場での仕事のやり方やあり方には、一切疑問を持たず何も思わない」
    「上司の言うことには、絶対に異を差し挟まず何も考えない」
    「個人の生活が幾ら犠牲になっても、全く苦にならず何も感じない」等々。
  • まあこう書くとまるでブラック企業だが、もちろんこんなことは募集要項にも会社案内にも書いていない。そこで働いてみて暫くたってから、分かるのだ。誰が評価されているのか、誰が陰口を叩かれているのか。それらを身を以て見聞きして、初めて分かることである。
    そこでの「評価基準」とは実は何だったのか、何が必要とされている「能力」だったのか、と。
  • こんなことを書くと「まさか、そんなことある訳ないじゃないか」と、言下に冗談扱いする人もいるのかもしれない。
    だが本当に万人が万人とも、誰もが冗談扱いして笑い飛ばせるのだろうか。そうだと言い切れないところが、サラリーマン稼業の切ないところである。

 

「雇用市場」の「市場化原理」

  • このように「雇用市場」によって「価値がある」と評価された「能力」に対してだけ「値段がつく」。
    言い換えれば「雇用市場」の中で「値段」がつくのは、需要者が「欲しいところ」だけだ。より正確に言えば「今、欲しいところだけ」である。
  • おまけにその「欲しいかどうか」の判断基準は「企業にとって利益になるのかどうか」だ。つまりあなたは企業にとって「儲かる人材」でなければならない。
  • それ以外の部分は見向きもされない。つまり「市場価値」はゼロである。価値がゼロなのだから値段もゼロである。

 

「必要性」の「他律性」

  • だがあなたは、自分に「値段」がつかなければ「買って貰え」ない。つまり収入が得られない。
    ところが「値段」がつくのかどうかは、市場の「必要性」次第である。つまりは他人の評価次第だ。
    これもまた「他律性」に左右される状況と言えよう。