9)人生モデル④「定性基準型」努力基準

  • もちろんこれまで述べて来たような「物量基準型」の人生モデルは、万人が万人、全員が賛同している訳ではあるまい。
    中には異論のある方もいらっしゃるはずである。
  • 例えばこんな考え方の方だ。

➢ 目標を持って努力するのが人生である。大多数のサラリーマンは努力をしているではないか。人間、向上心を失っちゃ、おしまいだよ。
➢ 主観的な自己満足に陥らず、絶えず向上の努力を続けることが人生であり、人間の存在意義なのである。
努力し続けているのかどうか、それが基準となるのだ。

「努力度」基準への変換

  • なるほど。そういう考え方では、物量基準ではなく「努力度」を基準に差し替えることになるだろう。次図に図示した通りだ。
  • 物量値を否定するのであるから、ここでは物量値のように定量的な基準設定はできない。
    可能なのは「努力し続けているのか、していないのか」という定性的な基準設定だけだ。
    従って上図のように「努力度」の「多い、少ない」の定性的な方向軸のみ設定することになる。

基準値は「自分」

  • だが問題はある。「努力度」をどのように評価するのかと言う方法だ。
    自己申告の自己評価では、自己満足と区別がつかない。自己満足を起点にしたら、それ以上の方向性が設定できないのだ。
  • 方向性の設定の為には、基準値を設定しなければならない。現状の自己評価と基準値との落差が、達成経路の方向性となるからだ。
  • 結局その答えは、「(今の)自分を基準にする」である。
    同語反復的に聞こえるかもしれないが、説明すれば以下の通りだ。
  • つまり自己の視点から見た自己イメージを基準に、自己位置の比較判定をする。
    そして自分よりも上位にあると見做す、模範者(ロールモデル)を探すのである。
    そして、自己位置とそれよりも上位の模範的他者をプロットして、層別分類を行う。図示すれば、次図の通りである。

取るべき達成経路

  • このモデルにおける達成経路は次図のようになる。
  • つまり「①勝ち組」「④禁欲家」など、自分より「努力度」が上位にあると自分が見做す他人を模範(ロールモデル)に、その模範者の信条、信念、標語、行動規範、生活習慣などを模倣する努力を継続するのである。
  • なお、自分よりも「努力度」が下位にある(と目される)「②現状満足派」や「③出遅れ組」は、「ああなってはならない」という反面教師としてのみ参照する。これが「努力」の内容である。
  • 図示すれば次図の(ア)から(イ)を経て(ウ)へ向かう経路である。やはり自分の現状の満足度を「反省」して努力に「邁進」し、最終的には勝ち組の立場の「享受」を目指すことになる。
  • なお、ロールモデルとなる模範的他者の発見も、常時継続しなければならない。これも「努力」の中に含まれる。

努力の目的

  • なお ここで、この「努力」の目的と対象には、下記の二通りが考えられる。
  • つまり「努力」の概念は恐らく人によって違う。
    世俗的な成功だけを目指す打算目的に限定する場合もあれば、そうでない場合もあるだろう。
    またその両方の達成を目指す人もいるかもしれないのである。

このモデルのメリット

  • 自己位置が基準になるので、基準点が変動しない。
    模範的他者をロールモデルとして発見し続けられる限り、自己位置は変動せず、同じ方向の達成経路が示される。
  • その結果、際限のない努力を継続しなければならなくなる。
    だがこの人生モデルでは、そもそも「努力」とその継続は「良いこと」なので、それは問題にはならない。

 

このモデルのデメリット

  • 自己評価を基準にすると、自己満足と弁別できない惧れがある。
  • この惧れを避けるために、自己と他者を比較してその落差を達成動機にすると、やはり他律的な人生モデルになってしまう。