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「こころの病気」であるうつ病の回復は、「からだの病気」とは著しく異なる。
骨折を例にとって、考えてみよう。
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骨折の場合は、骨細胞が再生して再接合すれば完治する。以前と同じく「そのまんま元通り」の自分に復帰して仕事を再開していることだろう。即ち原状回復である。
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だがうつは違う。心の中で何かが変化して、それがきっかけで回復する。
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だから回復後の自分は、以前の自分とは全く同じではない。かといって全く別人でもない。
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「『以前と同じ自分』と『内心で何かが変わった自分』が、合わさった自分」になる。
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ではその「内心で何かが変わる」とは、いったいどういうことなのだろうか。
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「自分は何が原因でうつを発症したのだろうか」。その根本的な原因が自己認識できれば、自らの内心が変わる。そしてその後の行動も変わる。
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それが本人にとって新しい生活を生み出し、うつ病を克服する原動力となるのである。
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この点、うつからの回復にとっては、すごろく図で言うところの「⑬自己認識」が決定的に重要な段階となる。
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これこそが「うつは薬じゃ治らない」と書いた、第二の意味である。