基準値変動の要因
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これまた既に述べたように、このような基準値の変動には次の(ア)と(イ)の二つの要因がある。
(ア) 帰属母集団の属性規定による変動
(イ) 社会状況の時間経過による変動
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前者(ア)については既に一部述べた。
自己の帰属する母集団を、どのような属性で切り取るのかによって、そもそも母集団が異なってくるためだ。
従って当然のことながら、母集団ごとに統計値の分布は異なる。
となると、平均値なり中央値なり最頻値なり、その母集団における基準値も異なる。
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従って自分の獲得した物量値なり満足度が、ある母集団では基準値以上であるのに、別な母集団では基準値以下であるという事態があり得る訳だ。
平たく言えば「上を見たらきりがない」ということである。
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後者(イ)は、たとえ同一母集団であっても、時間経過によって社会状況が変わり、したがってその母集団における基準値が変動する場合である。
自分は同一の物量値なり満足度を維持しているのに、いつのまにかそれが世の中の基準値以下になり、取り残されてしまっている、という事態である。これが「格差拡大」とか「負け組」とか「落ちこぼれ」などとして、昨今の巷間で恐れられている事態なのかどうかは知らないが。
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いずれにしろ上記の(ア)と(イ)の両方とも、自己位置が他者の動向次第で左右されるという原理には変わりはない。